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若本修治の住宅コラム

2012.3.10 第70話

不動産における付加価値と工務店の役割とは・・・

通常、消費者が売買する商品やサービスは、人の手によって加工された手間や、提供されるサービスが付加価値として認識され、より高い満足度を提供することで、高い報酬が得られる。逆に言えば、人の手があまり入っておらず、誰が提供しても大きな差が出ないモノやサービスでは、大きな付加価値が得られず、報酬(価格)は低く抑えられると考えるのが一般的だ。

 

飲食店と農産物や魚介類の関係にあてはめてみると分かりやすい。素材によってもちろん高い安いはあるが、価格差と満足度に影響が出るのは、エンドユーザーが代金を支払う直前に加工され提供された「人の手間」だ。つまり料理人の手により提供された料理そのものの味やテーブルの演出、そしてお店の雰囲気や従業員のサービスによって料金が高いか安いかが判断される。同じ食材を使ったとしても、料理人の腕や店の雰囲気で付加価値(負担する価格と満足度)は全く違ってくるのは誰しも経験があるだろう。

 

ではこれを日本の住宅や不動産に当てはめてみるとどうだろうか?本来は人によって用途が変更され、手が加えられた住宅やその周辺の景観は、付加価値分ほど高く評価されて当然だろう。逆にいえば更地の土地については、もっと安く手に入ってしかるべきだ。安価な素材(土地)を、購入者にとって魅力ある住宅地に加工して、購入者の満足度を高め、より高い収益を得るのがプロの仕事だ。

 

しかし残念ながら日本では、都市部を中心に、単に利便性が高いというだけの「地理的条件」で、割高になっている土地が少なくなく、相対的に建物自体や周辺環境に対する価値は低く見積もられる。そして、予算に余裕があれば、より坪単価の高いハウスメーカーに行ってしまい、余裕がない人たちは、坪単価の安さにつられてローコスト住宅の広告につられてしまう。外観デザインや省エネ性能、街並みの調和などは関知せず、名の知れたところに頼めば安心だと思い込んでしまう施主がほとんどだ。

 

このような状態であれば、場所さえいい土地を押さえてしまえば、建物自体はどのような住環境でも売れるだろうと考える不動産業者が『建売住宅』や『建築条件付土地販売』を行い、良好な住宅地でさえ「景観を壊す方向」に向かってしまう。つまり施主を含めて皆が『資産価値を棄損する』状況をつくってしまっているということ。さらにそのことに建設業者も気づいていないということが大きな問題だ。

 

欧米では、登記上も土地と建物は一体で、土地価格がいくらで建築費がいくらという分け方はしない。概ね1/4が土地価格で3/4が建物というのが目安だとも言われているが、いずれにしても土地そのものには大きな価値はなく、人によって加工された「住環境」が、付加価値として売買価格に反映されるのだ。しかも日本のように入居して10年後には建物自体が半額の評価しかされないというバカげた状態に陥ることはまずない。それは将来資産価値が上昇し、売却時に売却益が出るような不動産を供給することがプロの役目であり、購入者や金融機関も厳しく査定する長年の経験値や仕組みがあることも大きい。

 

日本では不動産価格の下落が続く今でも相対的に土地価格は割高で、私たち建築業界が土地価格に影響を与える余地は少ないかも知れない。しかし、少なくとも住宅を取得する人たちに、将来資産価値があがるような建物と住環境、そして地域のコミュニティが維持発展できるような住宅を供給する責任は果たさなければならないだろう。

 

そのような住宅を供給して、はじめて米国のように地域において社会的尊敬を集められる業界に変われるのだ。

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