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若本修治の住宅コラム

2014.3.20 第94話

繰り返される郊外の団地開発の本当の問題とは・・・

私が住む広島市の郊外で、高台の山を切り開く住宅団地の開発が複数進んでいる。広島県もご多分に漏れず人口減がはじまり、すでに広島市も人口のピーク。広島市中心部周辺でも数多くの再開発地区や地方自治体が所有している未利用の土地があり、分譲開始から30年を超える郊外団地は、高齢化と少子化によって小中学校の生徒数は激減、バス路線の廃止も検討されようとしている。そんな状況にも関わらず、新しく山を切り崩して大型の住宅地開発が進められている。東北で高台移転が進まないのと対照的だ。

開発を進めるデベロッパーは、より効率よく数多くの宅地分譲が出来るように「垂直擁壁」の雛壇造成による住宅地の区画を計画し、出来るだけ自社がリスクを負わずに早く売り捌きたいと考えている。その結果、営業の機動力があり、まとまった土地を仕入れる資金力のある大手ハウスメーカーに売却を打診するのが常だ。しかし不動産価格が下落傾向の今の時代、大手も自社で多くの土地を抱えるのはリスクが大きく、結局複数のハウスメーカーに限定し、指定メーカーによる建築条件付きとなることがほとんどだ。

以前はデベロッパー側にも住宅建築の子会社があって、自社グループが分譲する区画では、その分譲地のイメージを高めるために、統一感のある街並みをつくろうという取り組みも見られた。しかし今はデベロッパー側が建物の販売リスクを負わず、指定された出展メーカーの営業力に委ねて、土地さえ売れれば街並みの調和については建築を担うハウスメーカー、工務店任せの分譲地がほとんどだ。形ばかりの建築協定はあっても、開発地全体のマスタープランは存在せず、もちろん「HOA」などの住宅地経営管理の仕組みも組み込まれていない。

団地内の道路や区画割、近隣公園の配置も画一的。造成に関わる土木工事の効率や販売効率を考えた「直線的で平面的」な道路計画とゾーニングが行われる。実際に分譲されて窓から見える景観などは考慮されず、区画のバリエーションもほとんどないため、販売のターゲットは一次取得層に絞られ、購入者の年齢層や家族構成、年収等も同質化されている。ほとんどの家庭が子育て世代の核家族、通勤の足は車が中心で、ローンを返し終わる20~30年後には定年を迎え子供たちは独立していくという、全国的にみられる郊外団地の高齢化の問題が繰り返されていくだけだ。

山林を切り開く郊外の住宅地開発は、環境破壊やCO2の増加、急傾斜地の開発による土砂災害等のリスクが取りざたされる。しかしそれ以上に、開発から数十年経過した団地のコミュニティの崩壊と空き家の増加、高齢者ばかりのゴーストタウン化が、地域の行政にとっては大きな社会問題になってきている。米国のように犯罪に結びつかなくても、インフラの維持管理や行政サービスの維持、福祉・医療関連の費用負担の増大など、行政コストは増すばかりだ。

したがって、民間のデベロッパーが開発する団地だとしても、もっと行政がマスタープラン策定に関与し、郊外団地の問題に積極的に関与してもいい。しかし、現状ではデベロッパー側が、開発にかかったコストをいかに早く回収して、売り逃げるかに終始し、20年前30年前と同じことが繰り返されているだけだ。

団地の成熟と併せて住民も高齢化する郊外団地の問題は、多様な世代、多様な階層の家族が入居できるようなバリエーション豊かで、魅力的ある街区の計画がなされること、そして成熟するほどに、街の魅力が増すような景観とコミュニティが形成され、入居者の入れ替えがあることでその多くは解決される。そのためにもしっかりとしたルールと、住宅地を経営管理するための組織が重要となる。

広島市郊外の山を切り拓いて進む高台団地開発
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