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若本修治の住宅コラム

2014.12.20 第103話

シェアリング・エコノミーの衝撃!

アベノミクスによる円安で、外国人観光客が増え、インバウンド消費が高まる中、私たちのようなビジネスで東京や大阪に出張する日本人ビジネスマンにとって、ホテルの宿泊費は高騰、なかなか予約も取れないという状態が生じた。国内消費が停滞する中で、中国人旅行客による『爆買い』など「インバウンド消費」は、観光産業だけでなく、国内の小売業やサービス業への波及も期待されている。一方で、既存のホテルや旅館だけでは増大する宿泊ニーズに応えられず、従来「旅館業法」等で厳しく規制されていた民泊に対しても「規制緩和」の方向が打ち出されている。

 

民泊の流れに大きな影響を与えているのが、米国生まれの『エアビーアンドビー(airbnb)』など、インターネットを利用して、世界中の旅行客にホテルや旅館以外の個人の空き部屋や空き家、空き施設などを提供するサービス。
奇しくも「空き家問題」が、個人だけでなく自治体の頭を悩ませ社会問題になる中、空室のある賃貸住宅を経営する不動産オーナーも「渡りに船」のサービスになっている。

 

民泊に限らず、現役で使われながら、年間の稼働率の低い「音楽ホール」や「スポーツ施設」など特定の専用施設で、空いたスペースを『時間貸し』でレンタルするマッチングサービスも数多く登場している。赤の他人との共同生活を送る『シェアハウス』も、中古住宅のリノベだけでなく、新築で計画されるケースも増えてきた。米国生まれの配車アプリ『ウーバー(UBER)』は、個人が空き時間に自家用車を使って、タクシー代わりに他人を乗せて小遣い稼ぎが出来るサービスとして、世界中に広がろうとしている。

 

このような、従来は「法規制のもとで、企業が安定したサービスを高い品質で提供してきた」分野で、個人が持っている遊休資産を他人とシェアすることで、利用者にとっては「低価格」で、提供者にとっては「臨時収入が得られる」マーケットが次々と登場している。双方のニーズを満たし、規制に守られてきた業界を脅かす存在になってきた。

 

このようなインターネットを利用した新しいサービスは『シェアリング・エコノミー』と呼ばれ、国境を超えてその経済圏が巨大化している。バブル崩壊後のデフレ経済で増えてきた「コインパーキング」や「カーシェアリング」も、大きな意味で“所有”から“時間単位の利用”に、人々の意識を転換させた「シェアリング・エコノミー」の産物と言ってもいい。すでに世界は「所有する」ことが豊かな時代ではなくなり、「共有する」ことで激しい環境変化に柔軟に対応できる「自由」と「経済性」を手に入れられるようになりつつある。所有することの負担やリスクを、ひとりの個人や法人が負う時代ではなくなってきたのだ。

 

すでに一部の富裕層を除いて、日本で個人が「土地を所有する」意味が薄れてきた。首都圏の郊外でさえ、土地の価格は将来的に値下がりしていき、地方では実家の不動産が子供たちにとって厄介者になりつつある。その結果が、空き家の増加であり、相続税対策の賃貸住宅の建築ラッシュとなった。将来の値下がりが確実で、固定資産税まで毎年支払わなければならない土地に、借金して「金利まで負担」するのは、欧米のように「不動産購入は、株よりも安全な投資」と考える国民には考えられないことだろう。

 

日本でいまだに“土地の所有にこだわる”のは、それ以外の選択肢がなく、また「将来的に土地需要は減退し地価は確実に下がっていく」という実態に気づいていない人たちが大半だからだろう。土地を「リースする」という発想がほとんどない日本でも、このシェアリング・エコノミーの流れは土地所有にも波及していくのではないだろうか?

今、日本でリースホールドが大きな可能性を秘めてきた。

ロンドン郊外の『ハムステッド・ガーデンサバーブ』にある20世紀初めに建てられた住宅。土地を地主から借りる”リースホールド”によって100年近く美しい住環境が守られている。
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