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若本修治の住宅コラム

2016.10.20 第125話

ブームに終わるもの終わらぬもの

戦後の経済成長を通じて、日本ではいろいろなものがブームになりそして消えて行った。土地利用に関しても、50年間で大きく様変わりしたと言っていい。それは産業構造が変わり、農業を中心とした「第一次産業」(田畑の土地利用)から臨海地区を中心に数多くの工場が建てられた「第二次産業」(港湾や工場の土地利用)を経て、小売流通業やサービス業を中心とした「第三次産業」(店舗と附帯する駐車場の土地利用)へと変遷してきた。

 

工場は、公害などの問題もあって、海岸線の埋め立て地や山を切り拓いた工業団地など、中心市街地から遠ざけられ、住宅も一戸建ては郊外にスプロール化していった。都市近郊の農地の多くが宅地化され、中心市街地との間は店舗やマンションで埋められ、次第に建物も大型化してきたのが現在の状況だ。そこには用途地域や都市計画は存在するものの、ほとんど無秩序に、民間が思うままに建物が計画されて、ブームを作った企業が次々と出店している。

 

中心市街地と郊外を結ぶ幹線道路沿い、いわゆるロードサイドに店を構えたのは、モータリゼーションが進み、車での買い物に便利な広い駐車場を持つ大型小売店舗。大規模小売店舗法の規制が厳しく、比較的小規模な食品スーパーや紳士服店、ホームセンター、大型家電店などのチェーン店舗も次々とオープンしていった。

 

その後、さらに交通量は増加。ロードサイドにはコンビニエンスストアやガソリンスタンドも急増し、外食産業も伸びて、ファーストフードのお店もドライブスルーを採用するなど、車での買い物を前提としたスプロール化が進んで、低層の住宅地はさらに郊外に追いやられてしまった。

 

大店法の規制が緩和されると、店舗の大型化はさらに進み、巨大な駐車場を擁す郊外型ショッピングセンターや家電量販店、大型書店やレンタルビデオショップなど複合店舗が、住宅地に近い利便性の高い場所で広大な土地を確保するようになった。その土地は、一次産業や二次産業では採算が合わなくなり、事業用定借など「地主から貸し出された土地」がほとんど。この数十年をみても、店舗の業態も規模も様変わりし、商圏や立地条件もずいぶん変化した。

今ではコンビニエンスストアを除く、ほとんどすべての商売が、店舗規模の大型化やネット通販の隆盛、新しい商圏の登場などで、店舗の統廃合をしなければ生き残れない時代に突入した。飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長した郊外型家電量販店も都心回帰にシフトチェンジし、総合スーパー(GMS)もオーバーストアで不採算店舗が増加、閉鎖を余儀なくされてきた。書籍や音楽、映像の電子化とスマートフォンの普及も、店舗不要の傾向に拍車を掛けている。

 

このように土地利用の需要は今後ますます減退し、人口減少も相まって地価も賃料も下落することはあっても、地方都市では上昇することは考えられない。この10年間は分譲マンション業者が積極的に土地を買い、大量のマンション供給をしてきたが、建設費の高騰や空き家の増加、将来の建替えのハードルの高さから、杭打ち等の安全性に対する社会的不安もあり、販売環境は厳しくなるばかりだろう。すでに賃貸マンションは飽和状態であり、相続税対策としてのマンション経営ブームは去ったと言って良さそうだ。

 

最後に残る土地需要は、やはり一過性のブームに影響を受けない「定住者への低層住宅の供給」だろう。人の営みが続く限り、住宅の需要はあり続け、勤務先にも近い「都市近郊」で低層住宅の需要は人口減少でも減退することは考えられない。とはいえ、まだまだ購入者にとっては地価が高く、土地所有者にとっては手放したくない資産だろう。

だから今日本でリースホールドが再注目され始めている。

米国シアトル郊外の大型ショッピングセンター。オークションサイトを運営する『ebay』の懸垂幕が目を引く。日本一の小売業だったダイエーは、土地神話の時代に「広~い土地を購入すること」で、安く仕入れた土地価格が上昇、担保余力によって多店舗化、大型化を進めた。今や土地を所有することはリスクでしかなく、ダイエーの凋落がそれを物語っている。

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