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若本修治の住宅コラム

2021.6.20 第175話

「クラスター」を”重症化リスク”と”経済へのダメージ”で考察する。

前回のコラムで、今回の新型コロナパンデミックに関してほとんど世間では顧みられていない『レジリエンス』という視点で、政治は何を重視して政策決定しなければならないかを考察してみた。前回のコラムはこちら!

 

今回のコラムでは、また聞き慣れない『オルターナティブ』という言葉をキーワードに、この1年間これまでとは異なる対策をしていたら、日本の未来はどうなっていただろうかを考えてみた。今、人類にとって歴史や技術の大きな転換点だ。世界の平和を脅かす地域紛争や宇宙空間を含む科学技術の進展によるグローバル競争のゆくえ、気候変動や人口問題など地球規模の課題が重なった中でのこの感染症パンデミックは、「今、住宅取得をするタイミングかどうか?」という極めて個人的な問題も含め、未来予測の重要性は高まっている。特に前回のコラムでも紹介した、あれだけ感染を抑えて新型コロナ禍を克服したように見えた台湾が感染急拡大した上に、国民のワクチン接種が6割を超えたイギリスでさえ、直近では日本の人口換算で2万人近くの新規感染者を広げている状況がニュースで知らされると、このタイミングで別の未来をシミュレートする価値は大いにありそうだ。まずはイギリスの新規感染者数の推移を確認したい。

全国民のワクチン接種率が6割を超え、今年5月には日本のマスコミがワクチン効果を喧伝した英国の6月17日の感染状況。人口換算で日本よりも遥かに感染者数が多く、しかも増加傾向にある。

 

オルターナティブとは「別の選択」という意味があるが、ここでは頭の体操として“1年前に日本が今とは別な選択をしていたらどのような世界になっていただろう”と想像の世界を描いてみたい。当社のような一般に認知されていない新サービスやイノベーションと呼ばれる変革は、従来の延長で考えても大きな社会課題は容易にクリアできなくなってきたことから、まったく新しい視点、別の切り口で考えることで初めて解決策を思いつくのであり、それこそ日本がお得意の「カイゼン(改善)」と日本が不得意な「イノベーション」の違いだ。日本ではこの1年間「カイゼン」を続けてきて、3度の緊急事態宣言も発出したが、そのたびに感染拡大を招いている。もはやカイゼンの限界だろう。

 

集団感染とは違う意味の「クラスター」分類をしてみる

 

感染症のパンデミックではクラスターと聞くと「集団感染」と反射的に浮かぶが、本来は「ぶどうの房」や「群れ」など“分類された層(クラス)”を指す言葉。世代別や嗜好別など、一定の集団の行動特性などを分析し、より効率の良い商品開発やサービスの提供など、マーケティングの世界でも利用されている。つまりロスを最小化し、効果を最大化するために有効なターゲットを探るということだ。全体の感染者数をマスデータで追いかけていても、より効果のある具体的な対策は新たには見つからない。あえて住宅に結びつけるなら、軒裏や外壁に木材が露出している「省令準耐火構造に満たない」老朽化した木造家屋が密集したエリアでの燃え盛る火災と、お隣との間隔が空いて建物自体も「準耐火構造」になった住宅地で発生した火災を、全国一律の対策で費用を投じる必要はなく、感染症でも自治体ごと平等にワクチンを配布するよりも優先順位で対策に傾斜をつけたほうが、より全体最適で早く目的が達成できるということだ。

結論からいえば、私がイメージしたオルターナティブでは“すでに日本では新型コロナ感染症は2021年6月には収束していた可能性が高い”というシナリオが浮かんだ。しかも経済を今のように痛めることなく、1年前の緊急事態宣言解除以降は通常飛行に戻すことも出来ていた。今騒いでいるワクチンさえ、大騒ぎしなくて粛々と進められることが出来たかも知れない。未来の分岐点で何を選択するかで大きく変わってしまうのがオルターナティブだ。

 

以下の図表を見て欲しい。日本人の年齢区分別に(1)感染による重症化リスクをグループ化したクラスターと、(2)活動量(行動範囲の広さ)や消費性向によって世代別にグループ化したクラスターに分けて、人口のボリュームや経済への影響をざっくりと比較してみた。重症化リスクや購買力、行動範囲は、年齢層できれいに分かれるわけではなく個人差は大きいものの、ワクチン接種が世代別に分けられているので、ここでもそれぞれ4つの年代層に分けて、どの層に重点的に対策を施すのがより効率的に効果を高めることが出来るか、判断材料として整理してみた。この表をベースに、都道府県別や繁華街などのエリア、飲食業などの業種をターゲットとして移動自粛や休業要請を繰り返していた過去1年間の日本の対策と比べ、世代のグループごとに対策に強弱をつけた「別の選択肢」を選んだ場合の影響がどのように変わるか、人口統計から数字を当てはめてみた。

 

日本国民の年齢区分から、新型コロナの重症化リスクを世代で4分類、行動の活発さや消費への影響をやはり4つの世代別グループに分けてクラスター分析した。

 

去年のパンデミック発生から、このウイルスは子供たちは陽性になってもほとんど発症せず、若い人たちも無症状が多いことが分かってきた。恐らく自然免疫によって感染まで至らず、そこが子供たちでも重症化や死亡リスクがあり学校閉鎖に至る季節性インフルエンザとの大きな違いだ。子育て世代を含むこの0歳~44歳までの人口構成比は約44%で、この人たち同士だけで日常生活を続け、仮に感染拡大しても例年発生するインフルエンザと同様な対応で大きな混乱は生じなかっただろう。インフルエンザのような特効薬(アビガン等)がないと指摘する識者もいるが、多くが風邪以下の症状なので、数日間静養すれば容易に社会復帰可能だ。指定感染症第2類に指定したまま大げさに隔離するから社会は混乱し保健所や病床も逼迫した。

社会経済活動では、現役で働く世代を『主要生産労働人口』として20~59歳までの人口構成比を確認した。そのうえで、この層の人達の消費性向を100として、他の世代層の消費性向(お金をどの程度使うか)の比率を、それぞれ未成年層で「5」、定年後の前期高齢者で「60」、後期高齢者で「20」と仮に想定して、人口を掛け算することで、購買能力を予想し、数値として『経済寄与度』を算出してみた。ざっくりとはいえ60歳の定年を過ぎた人たちに外出を自粛していただき、ほとんど個人消費の支出が抑えられたとしても、日本経済には現在の影響の2割程度(売上5割減のお店が1割減で済んでいた)に抑えられ、経済的ダメージは少なかったと予想される。

2つの分類の『重症化リスク別分類』と『購買力別分類』で、微妙な位置にある「中高年」(45~59歳)は、社会的には管理職だったり自営業の比率が多く、パートの主婦等がいたとしても、行動制限による家計へのダメージはそれほど多くないと考えられる。もちろん現在のように観光業や飲食業に強烈な営業自粛や時短要請などをしていないことが前提であれば、緊急事態宣言下においてダメージを被った自営業の飲食業経営者やその仕入先でもある農業従事者なども生活に困窮することはなかった。大打撃を受けた文化・芸術やイベント従事者も、この世代が少なくない。

従って、重症化リスクの低い”壮年期以下の世代は自由な活動”で感染拡大はインフルエンザと同様な対応、経済的影響度の低い”定年を過ぎた人たちには現在と同様な行動制限によって自粛して頂く”というメリハリのある対策を講じていれば、恐らく50歳代以下には「集団免疫の獲得」というプレゼントによって、日本経済と高齢者を守る別の世界があったかも知れない。今、高齢者のみにワクチン接種すれば、若い人たちが懸念するワクチンの副反応や接種会場の混乱も経験することなく、生殖能力を持つ人たちへの、遺伝子操作されたワクチン接種による「人類への悪影響懸念」も”笑い話”として聞き流すこともできた。

 

交差免疫と重症化リスクの関係

 

上記の結論は、この1年間で学んだ新型コロナの特性や知見などに基づき、実績数字なども反映させた上で「このようなシナリオが考えられたのではないだろうか」という若本個人の予測であり、実際にそれを実行する意思決定が出来たかどうかではなく、頭の中のシミュレーションだ。もう少し詳しく解説すると、まず前提条件として「重症化リスク」を以下世代別に抽出しそれぞれの特性を分析してみた。ちなみにサブタイトルにある「交差免疫」とは、以前に別のウイルスに感染して出来た「獲得免疫」が、別の新しいウイルスにも効くという免疫機能を指している。これが若い人たちの無症状の原因ではないかと言われている。

 

  1. 50歳未満の人たちは、重症化リスクは低く、死亡率は限りなくゼロに近い」という1年間のデータから、医療機関の逼迫には影響を与えない。つまり自由に活動してよかった。
  2.  高齢者が重症化しても、死亡は5%程度。95%は回復する。
    多死社会を考えれば、新型コロナでなくても1日3千人程度の高齢者が統計上毎日亡くなっており、肺炎(誤嚥性肺炎含む)で亡くなる人は年間10万人を超えている。とはいえ新型コロナは特に高齢者にとって容態が急変する可能性のある恐ろしい病気であり医療への負担も大きいから、この層の人たちはゼロコロナを目指し重点的に守りたい。
  3.  20代以下は8割が無症状・軽症で、幼児・児童も感染・重症化リスクのあるインフルエンザとの最大の違い。
    つまり20代以下は季節性インフルエンザよりもはるかに軽く風邪程度以下がほとんど。過半数は感染したことさえ気づかない。であれば、インフルエンザ並の警戒感で大丈夫。感染すれば、自然に免疫を獲得するから理論上はワクチン接種は不要。フランスでは、念のため若年層の既感染者は1回のみのワクチン接種としている。

 

日本総研の主席研究員でアナリストの藻谷浩介さんがまとめた資料。40歳以下はほぼ風邪と同じで数日で回復している。サイトカインストームなどで容態が急変し、医療逼迫を起こすリスクのある60歳以上への移動制限や感染予防対策、治療体制の充実を図れば、医療リソースへの過度な負担は避けられる。

 

この条件や実態は、ほぼ検証可能な根拠ある事実で、多少の例外はあっても今回の世界的パンデミックに比べて社会的影響は軽微。ガンや脳梗塞などと比べた後遺症は、経済的負担も生活の自由度も相対的に軽く済む。とすれば、医療逼迫を抑えるためにこれまで実施してきた「飲食業や旅行業をターゲットに」人流抑制する対策よりも「重症化リスク別にクラスター分けして、対策や行動制限に傾斜(強弱)をつける」ということのほうが、より直接的で効果が高いことがイメージできるだろう。以下さらに詳しく解説してみる。

 


今回のパンデミックが医療逼迫させた要因は、重症者自体の数以上に、

①サイトカイン・ストーム等により容態急変が医療関係者を慌てさせ恐怖に陥れた。

②症状軽減に使えそうな既存の治療薬(イベルメクチン・アクテムラ・アビガン)等の使用承認が下りず、治療が手探りとなった。

③指定感染症の第2類に分類されたままなので、集中治療室の医療チームが、通常の感染症以上に防護や消毒等に高い負荷が掛かり続けて疲労困憊した。

④日本では小規模なクリニックが多いため、病床数はあっても第2類の指定感染症への対応するだけの医師・看護師の調達が容易ではなかった。風評被害も恐れたために、結果的に医業経営を圧迫し、多くが後手に回った。

⑤第2類の指定感染症が解除されないことで、無症状であっても陽性判定された人たちは保健所によって隔離が義務付けられた。その結果、ホテルや自宅療養からあふれた感染者が病床を埋め、空きのない病床の状態が救急搬送先をたらい回ししたり、保健所の業務まで逼迫させてしまい、混乱を増幅させた。

といったことで社会にパニックを引き起こしており、感染者やクラスターを発生させた施設への非難・攻撃など差別が社会の閉塞感を生んだ。指定感染症の第2類を解除して、季節性インフルエンザ並の感染症として指定し直して、日々の感染者数の収集もやめれば、収束していくだろう。強烈な感染症指定によって、同調圧力が高まり、医療従事者への偏見やストレスにも繋がった。実際に2009年に流行した新型インフルエンザは、感染流行から約1ヶ月半後には厚労省が方針を転換、感染者数の全数把握も中止して国民の関心が薄れ、そのまま収束している。(詳細は後述)


 

そこで具体的には、重症化率によって世代を3~4にクラスター分類し、重症化リスクの高い高齢者(65歳以上)とリスクが中程度の中高年(45~65歳)、そして社会活動が活発な壮年期(30~44歳)、青少年以下(30歳未満)で行動制限のガイドラインをつくり自主規制してもらうことも考えられた。人のコンディションには個人差があり年齢で分けられないものの、現にワクチン接種は年齢で分けており、壮年期や青少年には感染力に業種や住んでいる地域は関係ない。壮年期や青少年以下の若者に一切の行動制限をせず、指定感染症の第2類を外していれば、恐らくこの1年間で陽性者数は爆発的に増えていたものの、医療の逼迫はほぼなく、人体に元々備わっている自然免疫の発動と、新しいウイルスに対抗する「獲得免疫」でウイルスを攻撃、抗体も体内につくっていただろう。

そうすれば、1年後には数千万人単位でワクチン接種しなくても抗体を持つ日本人”がいて、集団免疫を獲得していたかも知れない。国を挙げて集団免疫を目指したスウェーデンが間違ったのは、医療体制の整った福祉国家で、自然の死を受け入れるとして、高齢者を特別扱いすることなく感染を容認したことだ。若い人たちの過半がすでに抗体を持っていれば、海外製のワクチン輸入や接種会場の整備に右往左往することなく、ワクチン接種に使う公費は医療関係者や高齢者など3~2分の1で済み、現在のように産業医や歯科医、看護師OBや自衛隊まで総動員して医療リソースを使うことさえなかったということだ。6月中旬までに国内でワクチン接種後数日間の死者数は200人を超えている。

ちなみに日本での「季節性インフルエンザ」の推計受診患者数は、2016/17シーズンで1,046万人、2017/18シーズンで1,458万人、2018/19シーズンで約1,200万人(塩野義製薬調べ)となっている。インフルエンザは毎年流行前にワクチン接種している人も多いことを踏まえ、また高熱が出て初めてインフルエンザと分かり受診する人数だと考えれば、発症前に他人に感染させる今回の新型コロナでは、インフルエンザ並みの警戒をしてもこの数字は容易に超えるだろう。2019/20のシーズンのインフルエンザ罹患は、例年の100分の1以下の感染者数だった。

スウェーデンから学んだ大切なことは、重症化リスクの高い人たちへの接触だけは、海外からの渡航者への水際対策と同様、若い人たちの協力も得て厳格にすること、そして高齢者の人たちには、一定期間自由な活動を我慢してもらうことが求められる。それ自体それほど困難ではないことは、この一年間高齢者の多くがほとんど外出や旅行、持病の通院まで自制したことを考えると、若い人たちの行動制限をする必然性はなかったといってもいい。

 

経済へのダメージでのクラスター分類

 

続いて同様に、経済に対するダメージを世代別で考察してみる。やはり前提条件を以下抽出し、併せて分析した。

  1.  現状企業は60~65歳定年が多く、65歳から年金をもらえるから、高齢者の行動制限をしても、家計収入へのダメージは軽微
  2.  後期高齢者は購買力も低くなっており、自分のための買い物は少ない
    生前贈与などの財産の移転は感染症への影響はなく、行動制限に影響は受けない。
  3.  生産労働人口にあたる現役世代は、移動制限や会食などを自粛することで、経済への影響は大きく、特にサービス業の自粛は、非正規労働や地方など疲弊しつつあった経済的弱者ほど大きなダメージを与える
  4.  子育てが終わった中高年以上の女性は、旅行や会食、趣味など旺盛な消費性向があり、行動制限は経済に多少の影響を及ぼす。
  5.  大学生を含む生徒・児童の行動制限は、通学等の公共交通機関や賃貸アパートなど大学周辺の不動産への影響などはあるが、親の仕送り等でカバーしているケースが多いため、経済への影響は限定的。それ以上に失われる経験やコミュニケーション能力、スポーツ・文化等への未来の影響が計り知れない。また経済が動かなければアルバイト収入は失う。

地元紙で報告されていた広島県内の新型コロナ陽性者の世代別集計。6月9日に発表された内訳では、安芸太田町の90代の高齢者でも軽症以下の症状だったことが分かる。28日後までフォローすれば、より実態が明らかになり、50代以下はインフルエンザ同様の扱いに出来るかも知れない。

 

以上の、感染症による医療リソースへの悪影響と、経済への悪影響を重ねて、何を優先的に対策を打ち、社会的なダメージやロスを減らすかを考察すれば、今行われている『飲食店への時短・休業要請』や『大規模商業施設や集客施設への入場制限』は、社会的に非常に効率が悪く、効果が薄いことが分かる。その上、経済や国民に大きなダメージを与え続けることはすでにこの一年間で経験済みではないだろうか?

それを解決させるために、世界中がパニック状態になって奪い合っているワクチンは、冷静に考えれば人工的に遺伝子操作された、過去に使用実績のない、承認を急いだ人体実験といってもいい接種であり、元々人間に備わっている免疫機能から自然に出来た抗体ではないことを多くの人たちが忘れている。当初、感染対策を軽視し、首相が新型コロナウイルスに感染してまで集団免疫獲得を目指したイギリスはその後方針転換し、国民の6割以上のワクチン接種を進めても、未だに1日1万人を超える感染を抑制できていないことは前述した。

またスウェーデンのように世代別のリスク対策をすることなく、集団免疫を獲得しようとしたら、多くの高齢者施設で集団感染のクラスターが発生し、医療を逼迫させて重症化病棟を埋め、多くの死者を出してしまう。しかし感染から守るべき対象を明確にすれば、身内や恩人など大切にしたい高齢者に対して、カラオケやお酒のように我慢できずに感染リスクを冒してまで、近づこうとする日本人はいないだろう。高齢者側も政府や首長が言わなくても警戒し、万全な予防対策を取り続けている。

だとすれば、この一年間経済を犠牲にすることなく、すでに50歳代以下は集団免疫が獲得できるくらいに体内に抗体を持ち、厚労省は指定感染症の第2類を解除、コロナ病棟も季節性インフルエンザ程度の感染対策と公衆衛生で労働環境を改善、マスコミは陽性者数の発表をやめて、日本だけは新型コロナのパンデミックは収束していたという“別の未来”が達成できていたかも知れないという物語が、私の中では成立するのである。

 

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)

 


●参考まで、2009年に発生した『新型インフルエンザ』の対応がどうであったのか、内閣官房の公式サイトで「過去のパンデミックレビュー」として特設ページが開かれています。掲載は2018年12月から2019年7月までなので、今回の新型コロナの考察はまったく影響されていない、ある意味”日本政府の過去の学び”の記録です。その中で、元厚生労働省で「新型インフルエンザ対策推進室長」として働き、2019年現在(記載当時)は国立がん研究センターの理事長特任補佐になられている正林督章氏がまとめられた『2009年新型インフルエンザ -パンデミックの概要・国の対応(後半)-』から、当時のインフルエンザワクチンの接種スケジュールの表を転載します。妊婦さんや基礎疾患のある人たちの次には、高齢者ではなく、幼児や小学校低学年とその保護者が優先接種となっていたことは驚きです。重症化のリスク判断で優先順位が変わるのです。

現在の新型コロナと同様『重症化リスク』(=守るべき優先順位)として、インフルエンザは幼児や児童が最優先されていたことが分かる。行動が活発な若年層が感染を拡げるだけでなく、命の危険もあったから、治療薬も大量に調達されたが、使われないで処分された薬も多かったとされる。

 

この時のパンデミックの経験がありながら、なぜ今回の対策に応用されることなく、子供たちにとって季節性インフルエンザよりも軽い風邪症状だと分かった新型コロナを、親たちが過剰に恐れることになったのでしょう?その結果、世間の同調圧力が高まり、各地に自粛警察まで生んでしまいました。さらに本来は曝露していた様々な種類のウイルスまで防御したことにより、交差免疫などの免疫機能が鈍化している可能性も示唆されています。その結果といえるか不明とはいえ、2021年春以降、急に『RSウイルス感染症』が流行し始め子供たちを中心に感染拡大しています。このウイルスは新型コロナと違って、子供たちも重症化する可能性がある、子を持つ親にとってもコロナ以上に恐ろしい感染症です。

【過去のパンデミックレビュー 内閣官房のサイト】https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_04.html

GWに訪ねた金沢市の重要伝統的建造物群保存地区「ひがし茶屋街」。小雨が降っていたとはいえ、大型連休中の5月2日午前9時過ぎにも関わらず、この有名観光地も感染拡大を恐れ、ほとんど人はいません。

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